『なぜ、仮想通貨の税制を改正すべきなのか』藤巻健史議員インタビュー(前編)

『なぜ、仮想通貨の税制を改正すべきなのか』藤巻健史議員インタビュー(前編)
仮想通貨の「税制改正」を訴える国会議員
仮想通貨の税制改正問題など、国会の場で問題提起されている参議院議員の藤巻健史先生に、CoinPostで独占インタビューを実施。ビットコインなど現在の仮想通貨業界に関する見解を伺った。
藤巻健史議員プロフィール
参議院議員。「日本維新の会」政調会長代行。元モルガン銀行東京支店長。ジョージ・ソロス氏アドバイザーを歴任。

金融知識に精通し、仮想通貨市場を盛り上げるべく活動する国会議員。「仮想通貨の税制改正」について国会で問題提起するなど、仮想通貨及びブロックチェーン業界の発展に尽力している。

Twitter:藤巻健史(@fujimaki_takesi)

藤巻議員インタビュー(前編)

まずは、仮想通貨の規制面について、率直なご意見をお聞かせ下さい

私はもともと仮想通貨だけではなく、一般論として規制過多は良くないと思っていて、特に日本は何でも規制しますが、やはり自己責任でやるべきことはきちんとやる方が良いと考えています。

ただ、仮想通貨に関して言えば、顧客保護のことをしっかり考えないといけない。もう一度同じようなこと(顧客保護の甘さに起因する大規模な不正流出)が起きてしまうと、業界そのものがポシャってしまうリスクがあるので。

もちろん、業界全体のために”しっかりとした仕組み”は必要不可欠だと思っています。

レバレッジに関して

あとレバレッジに関しては、これだけビットコインなどのボラティリティが大きいと、レバレッジをあまり大きくするのは難しいですね。

仮想通貨も、オプション(将来の決められた満期日に、あらかじめ決められた価格で売買する「権利を売買する取引」)みたいなことができれば、「オプションの買い」ということでレバレッジを効かせられるから、そういう風にやればいいかなと思っています。

私なんかも、「JPモルガン」に所属していた時は、何百倍というレバレッジでやってたわけなんですが、あれは相当な知識があって、ロスカットがばっといくような仕組みがあることが前提になる。

そういった面で言うと、オプション取引はすごく良くて、そういう商品を提供して、レバレッジが低くてもリスクを取りたい人には、リスクを取れるような仕組みを作れば良いと思います。

金融庁の研究会でも、若い人達によるハイレバレッジ取引を懸念する意見がありました

それは、”怖さ”を知らないからです。

私たちみたいに「自己破産だ」と思うような経験をした人じゃないと、やっぱりレバレッジ取引は難しいですよね。部下のトレーダーには、(比喩表現で)「血反吐を3回吐くほどの経験をしないと、一流のトレーダーになれない」とよく言ってました(笑)

本当の意味での苦境を経験しない段階で、レバレッジを大きくすると精神的に耐えられなくなりますよ。私は金融業界で30年間やってたからなおさら良く分かりますけど、大きく負けた時の辛さって半端じゃないですからね。

先日の財政金融委員会でも指摘されてましたが、現在の「仮想通貨の税制」については、どのようにお考えでしょうか

数は力なので、私も『日本の税制を変える会』をネット上で発足させようかと考えていて、後援者を集めたいなと思ってるんですども。

例えば、匿名でいいので署名などを集めるための会員になっていただいて。

税制に関して、重要なのは4点あります。

  • (株やFX同様)税率20%の分離課税にすること
  • 通貨を換える時の非課税
  • 少額使用の時の非課税
  • 損した際に、分離課税にして繰越を認めること

例えば、株だったら「青色申告」で3年間繰り越せますから、その4点はどうしてもやっていきたい。

私は今まで色々なことで、麻生大臣にも指摘してきました。税務当局のロジックで言うと「雑所得」というのも仕方ないかなという部分もあるんですけど、税当局のロジックだけじゃ、今後は駄目なのではないかなと。

これだけブロックチェーン産業と表裏一体の関係にある仮想通貨を発展させるため、仮想通貨自身も将来性のあるものだと思っていますので、その観点からすると税制のロジックだけじゃなくて、「日本の飯をどうやって食うか」というロジックで、安倍総理や麻生大臣が先導していかなくちゃならないトピックだろうなと思うわけです。

撮影:中村晋

日本の経済成長率と「新しい資産クラス」

日本の名目GDP(国内総生産)ていうのは、30年間で約1.5倍しか上がってないんですよ。

世界を見渡してみると、アメリカは約4.1倍、イギリスは約4.9倍、韓国は約19倍、中国は約75倍なんですけど、日本は他の先進国と比較して大幅に劣っています。

安倍総理は、昨年よりも良かったとか、第一次安倍政権が良かったとか、それなりに成長しているように考えているかもしれないけど、名目GDPが1.5倍にしかなっていない現状はやはり気がかりです。

大きなGDPを、さらに大きくするって大変なわけで、例えば1990年代に大相撲で活躍した小錦(体重200kg超)が体重を2倍にするより、小柄な私が体重を2倍にする方がよっぽど簡単なんですね。

要するに、世界最大の経済大国であるアメリカは、4倍もの経済成長を遂げていて、現在では日本を超える名目GDPの中国も急成長していることを考えると、日本だけ大きく遅れをとっていることになる。

この状況を何とか打開するため、将来のことを考えるのが「政治家の役目」だと考えています。どうしてこうなってしまったんだと。

今後、日本人が食べていくための産業をしっかりと育てないといけない。このままだと、三流国….四流国になってしまいかねないので、大胆に変革させて成長させなければならないんです。

その一つにはやはり、ブロックチェーンと仮想通貨、あるいはAI(人工知能)っていう分野は、極めて重要だと考えているので、その観点からも「税制を考え直すべきではないか」っていうのが、私の主張です。

私が、通常国会でずいぶん申しあげて来たのは、仮想通貨に対して税率20%の特別措置法(特定の事案に関する対策として特別に制定・施行される)を適用させるためには、「国がきちんと管理している」という条件が欠かせないんですよ。

なぜかというと、例えばドルの外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)という商品があるんですけど、日本の証券会社とか銀行を通じて、あるいは海外の日本機関を通じて購入すると「20%の特措法」が通じるんですが、MMFなどを海外で買うと、国の管理にないので総合課税という扱いになるんです。

国の管理にあるということで、特措法に適用されることが非常に重要なんですね。

仮想通貨取引所のコインチェックをグループ入りさせたマネックスなんかは、静岡銀行のグループ会社でもあるので、「銀行法」という極めて厳格なルールが適用されていることになる。

「国が仮想通貨の取り扱いをマネックスグループに認めたという事実」からすると、すでに十分、国の管理下に入っているわけですよ。つまり、分離課税の適用条件を満たしていると考える事も出来る。

なぜ、仮想通貨の税制は不公平なのか

FXとか株式投資は分離課税で、なぜ仮想通貨だけ総合課税なのか、という問題もあります。税の中立性や、公平感という観点に欠けていますよね。

現在は、その辺を国会で質問攻めしています。今度の通常国会で追及したい点は、この前新聞にも出てましたが、競馬での利益が「一時所得」になるという部分です。

一時所得っていうのは、通常所得を半分にして税率が掛かるわけですから、要するに、50%払う人はおよそ25%で済んでしまうんですよね。となると、競馬の賞金はなぜ25%で、仮想通貨は50%なんだという不公平感が生じる。

先日、日本の国会でもカジノ関連の法案(カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案)が参院で可決しましたから、「カジノの利益はどうなるんだ」という話も出てきます。

今話を聞いてると、一時所得になるんじゃないかとか…カジノが一時所得扱いで、仮想通貨はなぜ総合課税という分類になるのか、このような矛盾点について、整合性を追及していこうと思っています。

さらに言えば、麻生大臣は金融大臣であり財務大臣でもあるのですが、金融庁として仮想通貨を推し進めようとしている時に、国税があの仕組みだと押し下げてるわけで、麻生大臣の監督官庁である両省の方向が違うわけですよね。その矛盾点も攻めていきたいと思います。

大胆な税制改革を

さっきの税金の話に戻すと、将来的にはもう少しドラスティックに税制を変えないと持たないと思うんですよ。

仮想通貨は、国税当局にとっても計算が難しい部分がありますし、所得を隠そうとしている投資家がいたとしても、税務署側が税金を確実に追えているとは思えない。

「仮想通貨元年」と呼ばれて多くの仮想通貨価格が高騰した2017年は、2016年に比べて雑収入がものすごく増えてないとおかしいと思うんですけど、感覚値では想定よりも増えてないと感じます。億り人が300人超という報道もありましたが、申告漏れしている人もいるのではないかと。

税金に関して、仮に脱税している人としっかり納税している人がいるとすれば、あまりにも不公平なんですよ。

そうすると「税金って何だ」という話になり、若年層も不信感を抱くでしょう。だから、国税がきちんと実体を掴めない税制度というのは良くないわけですよ。

例えば、今後さらにIT産業が発達していって、「日本人がA国のものをB国に輸出し、決済をスイスの銀行で行う」ケースの場合、自発的に確定申告をしない限り、おそらく国税は完璧には追い切れない。

将来的に、どんどんグローバルな世界になっていくほど、国税は仮想通貨だけでなく、実体を掴めなくなりかねない。所得税みたいなものは難しくなっていく時代が来るのかなと。

例えば、日本円などの法定通貨から仮想通貨に換えた時に「1%」を支払うとか、そういった大胆な税制改革が必要ではないかと考えています。

撮影:中村晋

藤巻議員のツイッターには、「私たちの声を国会で代弁してくれた」という仮想通貨支持者の意見も多く寄せられています。いくら界隈のインフルエンサーらが主張しても、国会の先生方までは、なかなか声が届かない

ありがたいことですね。私の考え方は、割と保守的なんですよ。

昔から自民党的なんですけど、”アベノミクス”だけはミス政策だと感じて、どうしても耐えられなかったので、野党に入った。

その時に「異次元の量的緩和」をやっちゃいけないと主張したんです。当時の私は、海外の金融業界では有名だったので、主張すれば政治家に声が届くかと思いきや、全然届かない。

それゆえに、政治の世界に入ることにしたんです。

そうすると、みんな私の本や取材記事を読んでくれたりして、主張を理解してくれるようになりましたけど、いくら金融界で有名でも政治家は本なんか中々読んでくれない。

「これはいかん」と感じて、政治の世界に飛び込んだんですよね。やっぱり政治を動かすためには、政治の世界に入っていないと上手くいかない。

今はしょっちゅう、国税庁長官の藤井さんを国会で呼んで議論している。

正直なところ、年配の官僚は、仮想通貨に対してさほど興味なかったと思うんです。でも、私が厳しい質問を繰り返すことで、彼らは勉強せざるを得ないし、仮想通貨の知識も必然的に増えてくる。

国税庁の長官など、日本市場のルールを”規範していく存在”が、仮想通貨に対する理解を深めることは大きなメリットだと思うんですよ。

Twitterでも言及しましたが、国会で「仮想通貨の最大税率55%はおかしいじゃないか」って指摘すると、麻生さんは「給料の税率は55%で、仮想通貨の税率が20%だったら国民が納得しないだろう」って答えてきた。

しかし給料の場合は、今年の年収が3,000万で、来年マイナス3,000万ということはないでしょうと。0になることはありますけどね。

仮想通貨のような投資の場合は、今年の利益が3,000万で翌年3,000万のマイナスということも起こり得るのだから、儲かった時だけ税金がっぽり取られて、損した時は知らんぷりというのはあまりにも酷いのではないか。

そういうところはきっちり言っておかないと。どうしても、多くの政治家は考え方が旧態依然で、凝り固まってしまってるので。

だから、国会の場で「仮想通貨の税制について取り上げる」という行為は、非常に重要なことだと思います。

インタビュー後編に続く

後編は、「国会議員から見た金融市場の未来と、仮想通貨業界の将来性」についてお届けする。

11月8日(木)公開予定

藤巻健史議員プロフィール
参議院議員。「日本維新の会」政調会長代行。元モルガン銀行東京支店長。ジョージ・ソロス氏アドバイザーを歴任。

金融知識に精通し、仮想通貨市場を盛り上げるべく活動する国会議員。「仮想通貨の税制改正」について国会で問題提起するなど、仮想通貨及びブロックチェーン業界の発展に尽力している。

Twitter:藤巻健史(@fujimaki_takesi)

Source: CoinPost